東北での大入道

大入道の東北地方での目撃談。

手を合わせるお坊さん

北海道での目撃談

妖怪が主人公のテレビアニメが放映されるようになって久しいですが、それよりも 100年以上も前、ざっくりですが19世紀中頃に北海道で大入道が人々の前に 姿を現したとの記録が残されています。 札幌からほぼ真南に向かうと千歳市の支笏湖(しこつこ)というたいそう美しい 湖があるのですが、その南側にある不風死岳(ふっぷしだけ)でのお話です。 ちなみに支笏湖は北海道でも数少ない不凍湖なので、冬に水浴びをしたがる暑がり さんに人気の高い観光スポットとしても一部の間では有名です。 このあたりにはアイヌ集落があったのですが、そこに突如大入道がやってきて 住民達を威嚇して恐れさせたとされています。 巨大な肉体、そして大きな瞳をしていたらしく、一般的な成人男性よりも大きな 目玉で巨人に睨みつけられたらたまったものではありません。 対象となったアイヌ人は恐怖のあまり卒倒した、との話ですが、ひょっとしたら 卒倒しただけでは済まずに失禁までしてしまった可哀想な大人もいたかもしれま せんが、いくら怪談とはいえその方の名誉のためにもその部分はカットして物語 が伝承されているのでしょう。 100年以上も経過しているので今頃は失禁した人も亡くなられているでしょうから、 失禁くらいは話を盛り上げるアクセントとしてあったほうがいい、というエンター ティナーもいそうだけど、この噂が広まった当時はまだご健在なわけですから そこは気を使うべきだったのでしょう。

岩手県での目撃談

岩手県の紫波郡にある高伝寺は、一時期夜になると怪しい炎が出現する、大入道 がそこに出没するという噂が流れました。 たまにならば見過ごしても良かったのですがそれが連日なので、お寺の方たちも ほとほと困ってしまい、ついには見張りをしようと対策を立てたのです。 最初はキツネかタヌキの仕業だろうと考えられていましたがいくら注意深く見張って いてもそれらしき動物が怪しい動きをしているところを確認できず、そのうち 「タヌキやキツネではないのでは、他の小動物かモノホンの妖怪の仕業かもしれない」 と軌道修正を余儀なくされました。 しばらく警備をしているとある冬の日、お寺の周囲に可愛らしい小動物の足跡を 発見したのですが、その足跡は本堂から近所の住民の木小屋へと向かっていたのです。 こいつが鬼火や大入道の正体だな、追跡者はピンときたので村民を集めてその小屋を 取り囲んで慎重に調査を進めることにしました。 その結果わかったことは、イタチの巣がありそこに暮らしていた高齢のイタチが 高伝寺にちょくちょくお散歩に出かけていたらしい、ということです。 これで犯人が特定できたも同然なのでそのイタチを捕獲、難なく処分しました。 その夜からそれまで続いていた怪奇現象はピッタリと止み、村民やお寺の関係者は 平穏な暮らしを取り戻すことができたとのことです。 このお話では大入道という妖怪ではなく、長生きをして力を得た動物が人間を 驚かせていたということになりますね。

宮城県での目撃談

宮城県の仙台にはなんとも怪しくて大きな岩がありました。 詳しい場所は荒巻伊勢堂山で、この岩は日が暮れるとキテレツな音声を発するので 住民は気味悪がって夜になったらこの辺りをハイキングするのを控えるようになり、 不便な生活を強いられていたとのことです。 不気味な音がするだけならハイキングでもバーベキューでもドンとこいなのですか、 稀に岩が大入道に変化することもあったらしいのです。 この宮城県の大入道はかなり巨大だったらしく、空を覆うかのごとく目の前に立ち ふさがるのでみなが恐れていたのですが、このエリアのヒーロー藩主の伊達さんが 解決しようとついに行動を開始しました。 まずは家来に偵察させたところ、この噂は本当だったとビビッて戻ってきました。 そこで伊達政宗自ら出陣し、大入道と対峙して退治する運びとなりました。 現場に着くと家来の報告どおり恐ろしい唸り声を伴い大入道の登場です。 すかさず伊達さんが冷静に足元を攻撃すると、あっさりと大入道は消えてしまいます。 見掛け倒しで拍子抜けするほどあっさりと退治完了ですが、岩のそばを調べてみると 標準サイズよりもひとまわり大きなカワウソが転がっていました。 どうやらこのカワウソが大入道に化けていたらしく、無事に事件解決となりました。 このような出来事があったので唸坂という名称を授けられたこの坂ですが、 今ではもう唸り声も聞こえないいたって平和な坂道です。